「井伊直虎 女(おなご)にこそあれ次郎法師」梓澤要

こんな小説があったとは、寡聞ながら知らなかった。2004年から2005年にかけて連載され、2006年に「女(おなご)にこそあれ次郎法師」のタイトルで単行本化、2016年に大河ドラマの制作の報を受けて「井伊直虎」をタイトルに加えで文庫化したもの。
つまり、大河ドラマよりはるか前に書かれた作品で、決して便乗作品ではないのだ。そして井伊直虎を表立って採り上げた最初の歴史長編小説であろう。
井伊直虎大河ドラマ化する、というニュースを聴いた時は、いったいどこからこんな企画を思いついたのだろう、等と思ったものだが、この作品の存在が大きかったことは想像に難くないとおもう。
最初は、ドラマの前に読みたかった、と思ったが、もしそうだったら先入観を持ってしまったかもしれないので、大河ドラマが終わりそうな今の時期に読めて逆に良かった。
読んでいて自分で面白かったのが、他の登場人物はそんなことはなかったのだが、南渓和尚のセリフが脳内で小林薫演ずる南渓和尚の姿と声で再生されたこと。
小説とドラマでは当然キャラの立て方も違うが、井伊家のブレーンたる南渓和尚は、そうそうキャラに違いが出にくいのでこうなったのだろう。
以前、家康が直政をかわいがった理由としてこんな事を書いたが
http://hakuasin.hatenablog.com/entry/2017/02/27/050016
作者も後書きで似たような事を書いていたので、ちょっとうれしかった。