小説

第九軍団のワシ(1954)

ローズマリー・サトクリフ やっとのことで、ローマン・ブリテンの第1作目を読む。 女王ブーディカの乱(乱って使いたくないけど)から60年後のブリテンに、ローマ軍の若き百人(大)隊長のマーカスが赴任する。彼の父のひきいる第九軍団は、かつてカレド…

サトクリフのローマン・ブリテン・シリーズ

サトクリフのローマン・ブリテン・シリーズは、一般には「ローマン・ブリテン4部作」と呼ばれている。(出版順) 1954 第九軍団のワシ 1957 銀の枝 1959 ともしびをかかげて 1980 辺境のオオカミ しかし、前にも書いたが「夜明けの風」は、あきらかに「とも…

「夜明けの風」(1961)

ローズマリー・サトクリフ 「落日の剣」「アネイリンの歌」で、アーサー王関連も一息ついたと思ったが、「ローマン・ブリテンシリーズ」でアイクラへと受け継がれてきた「イルカの指環」を持つ少年が主人公の、アルトスが没して100年後の時代を描いた作品が…

黄金の騎士フィン・マックール

ローズマリー サトクリフ(1967) 先日のクーフリンと同様にサトクリフによる再話である。 こちらはクーフリンより後の時代のため、解説にあるようにアーサー王伝説等の騎士物語に近い体裁である。その分、ある意味(残酷な事はあっても)おおらかなクーフリ…

炎の戦士クーフリン

ローズマリー・サトクリフ(1963) 先日つん読状態から開放されるだろう、と書いたが(こちら)「ローマンブリテン」ものにちょっと読み疲れした感じなので、気分転換にやっと読む。 いわゆる「再話」という形式で、ケルト神話をサトクリフの文章で改めて書…

アネイリンの歌 ケルトの戦の物語

ローズマリ・サトクリフ(1990) 6世紀のウェールズの詩人、アネイリンによる叙事詩「ゴドディン」よりサトクリフが自由に紡ぎ出した物語。ゴドディンとは、今のスコットランドのアントニンの壁とハドリアヌスの壁(長城)の間の地域で、史実のアーサー王、ア…

落日の剣 真実のアーサー王の物語

ローズマリ・サトクリフ(1963 翻訳 2002) というわけで(こちらとこちら)再挑戦する。 いきなり「ともしびをかかげて」の主人公アイクラの名前が出てきてうれしくなってしまう。 状況も、前回読んだ時よりもよくわかるので、やはり「ともしびをかかげて」…

ともしびをかかげて(1959)

ローズマリ・サトクリフ これを読むまでの経緯はこちら サトクリフの「ローマン・ブリテン4部作」が岩波少年文庫に収録され始めたのは2,3年前からで、書店に並んでいるのを見かけては、ぽつぽつ揃えてはいたのだけれど、当時は「ローマ=悪」「ケルト=…

アヴァロンの霧(1983)

マリオン・ジマー・ブラッドリー 何回か浮気中断をしながらも、やっと読了した。前回の記事はこちら 読み進むにつれ、いろいろな感想があったので、メモしたりしていたのだが、全て読了したら、それらのメモは廃棄した。つまりは、途中の感想は、あまり意味…

落日の剣 真実のアーサー王の物語

ローズマリ・サトクリフ(1963 翻訳 2002) この本も長らくつん読状態だったが、アーサー王関連再読の勢いを借りて、やっと読みはじめる。 私は、政治的、宗教的な要求によって成り立った、いわゆる「中世騎士物語」としてのアーサー王伝説には興味がない。 …

女教皇ヨハンナ

以下アマゾンの「ドナ・W.クロス作 女教皇ヨハンナ」の紹介文より カトリック教会の公式記録から抹消され、伝承としてのみ語られてきた男装の女教皇。ヴァチカンが実在を否定しつづける伝説のヒロインが、いま歴史の闇から解き放たれる。歴史エンタテインメ…

「アヴァロンの霧」シリーズ(原書は1冊 1983)(翻訳:1988〜1989)

マリオン・ジマー・ブラッドリー 以前、入手が難しい状態と書いたこのシリーズ(こちらとこちら)も、たまたま調べたら、値段が落ちてきたのでユーズドで全4巻を購入した。 アーサー王伝説を、アーサーの姉の視点から、ドルイド教とキリスト教の対立をもり…

絵草紙うろつき夜太

柴田錬三郎 横尾忠則 以前ちらっと書いた(こちら)「うろつき夜太」であるが、連載時と同じ大きさの、最初の大判が、現在えらい高値がついている。 しかし、やはりこれで読まねば意味が薄れるので、いつか再版になるか、適正価格になるのを待ちたい。 しか…

時代小説英雄列伝「座頭市」子母沢寛 他

今誰かさんの映画をやっているが、「座頭市」は、子供の頃(まだテレビ放映がOKの頃だった)テレビに入っているのを見ているはずである。 それに、勝新太郎の歌「座頭市」によって、馴染みがあった。 「おれたちゃナ、ご法度の裏街道を歩く渡世なんだぞ」 …

花のあと

藤沢周平 藤沢周平という人は、気になっていたのだが、山本周五郎ファンとしては、素直な気持ちになれずに、何冊か買ってはあってもつん読状態であった。 が、このたび、セーラー・マーズ(笑)こと北川景子が、女剣士を演じるということで、とりあえずその…

ハリー・ポッター

最終巻を再読してから、また1巻から読んでいると先日書いたが、それぞれの巻で、当初「?」と思ったことや、なんとなく読み飛ばしていたことが、実は最終巻への伏線になっているのだ、と判って来た。 1巻1巻の構成も見事だが、シリーズ全体も、どれだけ考…

ハリー・ポッター

最近読書の感想が無いが、実は「ハリー・ポッターと謎のプリンス」のDVDを見るために原作を読んだら、そのまま「死の秘宝」まで読み、今度は「賢者の石」から読み直している最中(笑)

魔女の宅急便その6 それぞれの旅立ち(2009)

角野栄子 やっと読んだ(汗) 24年にわたった「魔女の宅急便」シリーズもこれでとうとう完結である。 13歳だったキキも、トンボさんと結婚して、男女の双子の母親になった。 そして、その双子は11歳、難しい年頃である(笑) 「親の心、子知らず」&「…

うろつき夜太(1975)

柴田錬三郎 横尾忠則 ケーブルテレビのチャンネル替えの最中に、市川雷蔵の「眠狂四郎」を見かけた。そこから 「柴田錬三郎」へ連想がつながり、この作品を思い出した。 週刊プレイボーイに毎回オールカラーの横尾忠則のエキセントリックなイラスト付で連載…

そういえば

某大河ドラマ、始まる前は「誰が前田慶次を?」と話題になったものだが、とうとう出なかった(と言っていいと思う。一番の見せ場は、裏「関ヶ原の合戦」である「長谷堂城の戦い」での撤退戦だったから) テレビドラマ史上、前田慶次を演じたのが及川光博だけ…

鷲 (光文社文庫)

岡本綺堂 「白髪鬼」から漏れた「近代異妖篇」や、「異妖新篇」「怪獣」等から編まれた光文社の綺堂怪談の第3弾である。 小学館文庫の「岡本綺堂 怪談選集」とは「兜」「鰻に呪われた男」「くろん坊」が重複する。 大正から昭和初期の作品ということで、時…

白髪鬼 岡本綺堂怪談集 (光文社文庫)

岡本綺堂 先日の「影を踏まれた女」に収録されていた「青蛙堂鬼談」の続編「近代異妖篇」を収録。小学館文庫の「岡本綺堂 怪談選集」とは「白髪鬼」「妖婆」が重複する。 相変わらず「理屈の通らない、理論的に何の解決もしない恐怖」に満ちた作品揃いである…

岡本綺堂の怪談

影を踏まれた女 岡本綺堂怪談集(光文社文庫) 岡本綺堂 怪談選集(小学館文庫) お盆というわけではないが、半七をちょっとお休みして、岡本綺堂の怪談を読む。 光文社のほうは短編集「青蛙堂鬼談」+3作品、小学館のほうは「青蛙堂鬼談」からの抜粋+6作…

前田慶次郎

近衛龍春(2007) 前田慶次(郎)は、未だに謎の人物である。生年月日も、実の父もわかってない。 ちなみに現在もっとも確かであろうといわれている生年は2種類あり、前田家側資料による1533年、上杉家側資料による1541年である。 1533年となると、叔父の前…

言えない記憶

原作:高橋克彦 高橋さんの「緋い記憶」が漫画化されていたとは知らなかった。「緋い記憶」に収録されている7作品中5作品の漫画化。執筆陣は以下のとおり。 篠崎佳久子 橋本多佳子 わたなべまさこ、つじいもとこ、井上洋子 最も好きな(というと語弊がある…

若き日の摂津守

山本周五郎 短編集「日日平安」に収録されている。代々奸臣により牛耳られてきた為、藩主は無能であればそれでよし、有能であれば主人公の兄のように押し込められてしまう。 主人公の乳母はそれを逆手にとって、子供の頃(7歳!)から主人公に知恵遅れを装…

テイル館の謎(1999)

ドロシー・ギルマン ミセス・ポリファックス・シリーズ「〜ヨルダン・スパイ」(1997)と「〜シリア・スパイ」(2000)の間に書かれた、ギルマンのノン・シリーズである。 これで、現在邦訳のあるドロシー・ギルマンはすべて読破したことになる。 折り合いの…

キャラバン 砂漠の愛(1992)

ドロシー・ギルマン ミセス・ポリファックス・シリーズ「〜アラブ・スパイ」(1990)と「〜シチリア・スパイ」(1993)の間に書かれた、ギルマンのノン・シリーズである。 空中ブランコ乗りの父を早くに亡くし、祖母と母に育てられた根っからのカーニバルっ…

人形は見ていた(1989)

ドロシー・ギルマン ミセス・ポリファックス・シリーズ「〜ハネムーン」(1988)と「〜アラブ・スパイ」(1990)の間に書かれた、ギルマンのノン・シリーズである。 第2次世界大戦直後の独立時の混乱期のビルマ(現ミャンマー)宣教師の父が自殺し天涯孤独…

ハリー・ポッターと死の秘宝(原本2007年出版)

J・K・ローリング 日本発売当初に購入していたのだが、前作から2年あいているし、ネット上でだいたいの話もわかってしまっていて、なかなか読み始める気にならなかったが、ドロシー・ギルマンも一息つきたくなったので読む。 忘れてしまった登場人物を、ウ…