バスカビル家の犬(2002)

創元の世界短編傑作集を読んだせいか、古い推理小説が読みたくなってホームズからざっと読み返している。そういうつながりでもないが、正月あたりに録画しておいたドラマ版ホームズをやっと見る。実は2004年放映の再放送らしいが。
大筋は原作どおりだが、気になる点がいくつか。ホームズが腕に注射をするシーンが2度ある。たぶん麻薬であろうがこのシーンの必要性がわからない。確かに原作(の他の物語)で、彼はあまりにも事件が無いときに事件を扱っている時の気分の高揚感が味わえないためにその代用として麻薬を打っていた。しかし、麻薬は事件には及ぶべくも無いと語っているし、後年はすっかり足を洗っている。ところがこのドラマだと、あたかも麻薬の力をかりて推理しているかのような表現である。確かに一般にヒーロー扱いされているホームズの別の面を出したかったのだろうが、伏線にもなっていないし、ホームズをおとしめるだけでまったく不要のシーンと思われる。また交霊会のシーンもある。ドイル晩年の心霊科学の研究を踏まえたつもりだろうが、ホームズの物語にあえて入れる必要があったのだろうか。
羊たちの沈黙以降、犯罪者のほうに焦点が当たるケースが多くなったが、こちらも原作では行方不明になる犯人がちゃんと最後までいて異様な存在感をあらわしていた。この人はヤング・シャーロックにも出ているらしいが、きっとモリアーティ役だろう。しかし、犯人の妻を殺してしまったのは後味が悪すぎる。
ワトソンは原作よりも、情報を明かさないホームズにご立腹、最後はホームズの命を救って面目躍如といったところ。ホームズもへそをまげたワトソンの機嫌をとるのに必死なのがかわいい。
ホームズ役は好演だがジェレミー・ブレットよりやや弱いか。声優の津嘉山正種さんの存在感のほうが強い。