安能務

ここ何年かで一番読み返しているであろう本がある。安能務の「春秋戦国志」「中華帝国志」である。なぜ分かるかというと、文庫の傷みが激しいのだ。で、この安能務さんが2002年に亡くなっていたことを最近知った。つまり今出ている作品を全部読んでしまったら、もうこの先が無いのだ。隆慶一郎さん以来のショックである。安能務さんのおかげで、ずいぶん目から鱗をおとさせてもらった。例えば三国志の時代、なぜ三国に分かれて統一政権が出来なかったのかを、一般には群雄割拠で力が拮抗していたからだ、と漠然と考えていないだろうか?ゆえに英雄達のドラマがあって三国志演義のようなフィクションが発生したと。しかし、実は、後漢末期までに地方豪族勢力が農民をがっちり握ってしまっていて、魏、呉、蜀とも、税収がままならなかったというのだ。つまりは統一するほど金のある国が当時存在しなかったというだけの話なのだ。英雄達のドラマも要は金の問題だったのだ。
ちなみに安能さんの「隋唐演義」が史実に反していると怒っているサイトがあったが、そもそも「演義」と断っている以上、フィクションである。文句をつけるほうがどうかしている。三国志も実は「演義」なのだが、まさかみんな史実と思ってないでしょうね?忠臣蔵も史実と思ってないでしょうね。

明日から1週間、毎日は書けないかもしれません。