ブルックナー 交響曲第3番の版の話

私がブルックナーを聴き始めた頃は、改訂版と原典版(ハース/エーザー版)しかなかった。だんだんノバーク版が出だして、現在は全ての交響曲について落ち着いたようである。で、第3番だが、ざっと以下のようになる。
1.ノバーク1版:1973年
2.ノバーク2版/エーザー版:1977年
3.ノバーク3版(旧改訂版):1989年
これは、演奏しても評判が悪いものだから、ブルックナーがどんどん手を入れていった結果なのだが(後半は、一般受けするオーケストレーションを弟子に奨められ、そのとおりにしたという説もある)
さて、この3つの違いだが、まず一つ目は、どんどん短くなっていっている。本人の推敲のあとだろうが、第1楽章で2/3ぐらいになっている。最終楽章は、第1主題の再現部がすっぽり落ちていたりする。
第2にスタイルの違い。すでに第7、第8を書き終えていたため、初期の曲の第3に後期の作曲スタイルがまじるという結果になった。とはいえ、一番完成度が高いのはやはり3版で、ほとんどの指揮者がこれを採用している。1版はインバル、ノリントン(最近気になってる人、未聴)2版は朝比奈隆アーノンクールぐらいしか私は知らない。2版は、最終楽章等が大分増えたとはいえ、増やすなら徹底的に1版くらいまで増やしてほしいので私には中途半端に聴こえる。
1版は、ブルックナーにとっていらない部分を削ったのだろうが、ファンにはうれしいフレーズに満ちている。また、ノバーク3版でいう楽譜記号「M」直前、296小節からの「展開部」(だと思うが)が、3版はピチカートを伴奏とする後期スタイルなのに対し、1版はぐんぐん前へ進んでゆく若々しいスタイルで、わたしは、ここの部分が大変気に入っている。とはいえ、第1楽章、第4楽章の終結部など3版はいかにも完成度が高いため、私の理想としては、1版を元にして、3版の部分部分で置き換えるといったやり方だが、これでは編曲になってしまう。
だが、一度そんなブル3を聴いてみたいものである。