十角館の殺人(1987)

綾辻行人
以前、この人のことを日記に書いた後に購入していたのだが、途中小森健太朗やウォーショースキーものが間に入って、後回しになっていたのだ。ちなみにウォーショースキーは5作まで読んで一休み、ちょっとヘビーな内容で、次を読む元気が出なかった。
で、この「十角館の殺人」である。(推理小説ファンからは、今ごろ何を言ってると怒られそうであるが)みごとにしてやられた。最初、2つのストーリーが同時進行してゆくが、展開のし方が大変うまいなあ、と感心していたら、実はそれがトリックだったなんて!こちらも一応は推理小説は結構読んでいるので、パターンとして犯人のあたりはつけていたのだが、その人物は早々と自分の中ではずしていた。ところがやっぱりそいつが犯人であった。うまいものだ。また、作中人物が有名推理小説家の名前をニックネームにして呼び合うと言う設定自体が、トリックであるというのもすごい。
ちなみに、作中でもそれに近いことが語られていたが、現代において、面白い推理小説を成り立たせるためには、極端な虚構空間を想像し、読者もそれを承知で楽しむという方法しか、残されていないような気がする。