怪人対名探偵(文庫化2004年初出2000年)

芦辺拓
江戸川乱歩全集最新刊を購入した際、新刊コーナーで見つけて、とりあえずタイトルにひかれて購入。綾辻さんの時もそうだったが、この人の事も不勉強で知らなかった。やはり私とほぼ同世代で、いわゆる「新本格派」の人なのだろう。確かに、凝りすぎとはいえ、その構成、結末にはうならせるものがある。しかし、いくら復讐心が強いとはいえ、大量殺人の必然性が感じられないし、(だからなのだが)殺し方の残虐さは読んでいて不快である。
江戸川乱歩の場合、どんな残虐シーンでも、一種夢物語のように感じさせるところがあって、さほど不快ではない。そこらへんが乱歩のうまいところ(?)なのだが、江戸川乱歩に捧げる(?)のであれば、そこらへんも考慮して欲しかった。(もしかして、あえてそこを狙ったか?)
ともあれ、私ごときがこの1作でこの人の評価を下すのは早すぎる。「真説ルパン対ホームズ」「明智小五郎対金田一耕助」等という、読む前から(期待はずれの恐れを抱きながらも)よだれがたれそうな作品があるため、これから、しばらく追っていきたいと思う。