悪夢(1979)

山岸凉子(文庫「タイムスリップ」)
とうとう八戸でも虐待死の事件が起きてしまった。奈良の幼児殺害といい、あまりにもこんな事件が多い。この作品は実際に起った「メアリー・ベル事件」の犯人の刑務所(精神病院?)での様子を描いたもの。彼女は11歳までに3歳と4歳の男の子を殺害したのだ。この作品はかなりリアルタイムに近い時期に読んでいると思うが、そのときは「そんな少女がいるのか?」と言った思いしかなかったが、後年、事件の背後が段々明るみになってきて、実は彼女の実の母が、彼女を強制売春させていたために、彼女の中に異常心理がおきてしまったというのだ。犯人にも事情があったとか言うことは、あまり言いたくないし、被害者やその家族がそれで悲しみが減るわけではないが、こういう、幼児期の異常な環境や強制(精神的なものを含めて)で、いったいどれだけの犯罪者や被害者が生まれているのだろうと思うと、例えばさっきのメアリの母などは、司法で裁けないものか等と考えてしまう。でも、もしかしたらその母自身も、肉親に異常な育てられ方をしたのかもしれない。虐待死の犯人は、よく「しつけだ」という。もしかしたら、本人も親に必要以上に暴力をふるわれて「しつけだ」と言われていたのかもしれない。この連鎖は、どうやったら断ち切れるのだろう。