グローイング・アップ・ライブ(DVD)(2003)

ピーター・ガブリエル
さて、白髪禿頭白髭となったピーターのライブである。ピーターは。プリミティブなリズム、民族音楽性等を自分のプログレ的モダンポップスに融合させてきたが、前作でその完成を見、今後は別の地平を目指し始めたということかもしれない。(だから、グローイング・アップか)Ⅰ〜Ⅲあたりのアグレッシブな実験性に戻ってみると、スケールと深さが何倍にもアップしたという感じか。そういえば、イントロは、ピーターのソロ最初のコンサートと同じヒア・カムズ・ザ・フラッドだった(ただし、ベストアルバム用の新録音バージョン、これはメロディが変わってて私はあまり好きではないのだが)
ステージのギミックはあいかわらず全開であるが、アルバムでも指摘したモノトーンというコンセプトがあるらしく、青が基調であり、色の変化はあるものの、常に1色が強調されている関係から、派手さは感じられない。メンバーも黒を基調とした衣装、特に男性はピーターに合わせて頭をそるか、坊主頭(トニーとデヴィッドは初めからはげているが)
そういえば、パーマネントなバックメンバーから有色人種がいなくなった。ドラムは、以前はアフリカンパーカッションをそのままドラムに移行したようなカラフルなドラマーだったが、今回比較的若く、激しさとインテリ性をあわせもつ、いかにもポストロック世代のドラマーで、前回と同じ曲も、違ったのりになっている。
選曲であるが、やはり、今回のモノトーン調のツアーに合わせたのか、エデンの情熱、ドント・ギブ・アップははずされ、レッド・レイン、マーシーストリートといった、SOのなかでもⅠ〜Ⅲの色が強い曲が採用されている。「この夢の果て」が残ったのも、同様の理由によるものだろう。たとえは悪いが、近未来のSF的新宗教の儀式でピーターが祭司となっているといった感じ。前述のメンバーの衣装(頭髪?)合わせや、スタッフ達もおそろいのオレンジの袖なし作務衣の坊主頭(少林拳みたい)ということで、ますますその印象が強い。これなら白髪禿頭白髭のピーターでも成り立つ。なるほどね。
今回ピーターの娘が、姉がスタッフとして、妹がバックコーラスとして参加している。妹のほうは見せ場が少ないせいもあるが、今までの共演者、ケイト・ブッシュ。シンニード・オコナー、ポーラ・コールに比べるとインパクトが少ない。イン・ユア・アイズで登場した、ウズベキスタンの歌姫、セヴァラ・ナザルハーンにすっかり場をさらわれた感じで、ちょっとかわいそう。