風の十二方位

アーシュラ・K・ル=グウィン
今「ゲド戦記」で話題の(?)ル・グウィンの初期10年の間の短編集をほんとに久々に読む。常々思うに、SFとは、日常では想像のつかない環境、状況を設定し、その中における人間(とは限らないが)の思考、精神のありよう等を考察することにより、逆に「では、はたして人間とは何か?」を探求できる文学ジャンルだと思っている。(もちろん他の面もたくさんあるが)「九つのいのち」は一人の人間から作られた男女5人づつのクローンによるチームが辺境惑星の採掘調査にあたる話で、事故でそのうちの九人が亡くなる。ある意味常に「自分」としか接して来なかった(S○Xさえも!)彼の精神のありようは、現代の様々な精神病理学にも通じる面があるのではないだろうか?他にもデビュー作である「ロカノンの世界」の序章部分や、「闇の左手」と同じ舞台の作品などなど、読み応え充分のル・グウィンの世界だ。