究極のSF(1974 邦訳初版 1980 再販 2006)創元SF文庫

懐かしいアンソロジーが再販されていた。12のSFテーマ(タイムトラベル、ロボット、etc.etc)について当時の代表的なSF作家に「究極の作品」を依頼して編まれたもの。さすがに読み応えのある「究極の作品」ぞろいで、それは(他の作家については寡聞にして知らないが)ディック、アシモフがこのアンソロジーに収録された作品を、自らの短編集に再収録していることからも伺える。
しかし、いかにも70年代SFに共通するこの重苦しさ、切なさは何だろう。60年代のニューウェーブを経て、SFはどんどん問題意識を拡張させ、50年代のアイデア一発勝負の読後感さわやかといった作品は、ほとんど影を潜めている。たしかにこういう時代もSFの深化には必要だったとは言えるが、その反動が「ニュー・スペース・オペラ」だったり、アシモフ「銀河帝国シリーズ」復活に対する諸手をあげた歓迎でもあったわけだから、だれもがこの時代のSFを喜んで読んでいたわけではないのでは、なんて思ったりもする。
ちなみに唯一の例外がテーマ「スペースオペラ」のハリー・ハリスン「CCCのスペース・ラット」 で抱腹絶倒のスペースオペラパロディ。2段落ちもなかなか考えさせられる秀逸の出来。
PS1.アシモフの「心にかけられたる者」については前に日記に書いた
PS2.この本の昔の表紙は、内容にあまり関連性の無い、女性が中世騎士の格好をしているものだったような気がするが、あれは何だったんだろう?