続あしながおじさん(1915)

(Dear Enemy)
ジーン・ウェブスター
実は「続」と言いながらも主人公が替わっているので、厳密には続編ではない。「続」とつけているのは日本の出版社の事情であろう。しかし、実は私はこっちの方が好きであることは以前にちらっとだけ書いた。
今回取り上げたのは、先日の話も若干関連があるが、この中で「精神的疾患」や「アルコール依存症」と「遺伝」に関する記述があり、これがかなりの読者に不快感を与えていることであるという点についてである。
前作の主人公ジュディの親友でお金持ちのお嬢さんのサリーが、ジュディの育った孤児院の院長に任命されて、苦労知らずのお嬢さんが厳しい現実に直面して、たくましく成長してゆく話なのだが、アルコール依存症や、精神的疾患があきらかに遺伝していること、よって子供や社会のためにも、そういう人々が妊娠しないように強制的に社会が保護するべきではないかという主張がでてくる。現代の目から見たら、とんでもない人権侵害であるが、これは当時の状況を考えないといけない。犯罪常習者やアルコール依存症、精神的疾患について、やっと医学的な研究が進み、いろいろが事がわかってきた矢先の作品なのである。であるから、作者としてはなんとかして、世間の悲惨さを軽減したいという思いから、それらの研究結果にとびついたものだと思いたい。もしそうなら、その点、わりびいて考えてあげなければいけない。けっこうネット上でもこの作品に対する非難があるので、ちょっとだけ弁護させていただいた。

その作品の書かれた時代やお国事情というのは無視できないもので、たとえば、赤毛のアンシリーズ最終作「アンの娘リラ」は第1次世界大戦を描いている。今の目から見るとあまりにもドイツを悪の権化として描いているのに違和感があるが、当時の国際意識の低さや、カナダにとっては敵国である事情からしょうがないのだ。