I Want You(1976)

Marvin Gaye
プロデューサー兼ミュージシャンのリオン・ウェアの企画をほぼ譲り受ける形で制作されたアルバム。なぜ、他人の企画を譲り受けたかというと、前述の年上の奥さんとの離婚問題で多忙にもかかわらず、レコード会社との契約上のノルマを果たさねばならないという事情があったようだ。しかし、録音技術や演奏技術の向上、プロフェッショナルによるプロデュースということで、もっとも完成度が高く、もっともキャッチャーかつダンサブルなアルバムに仕上がっていることも事実。彼の歌唱も円熟の極致で、最後まで安心して聞ける。
この後、慰謝料にあてるための離婚問題をテーマにしたアルバムを発表後、ジャニスと再婚するも、やはり離婚してしまう。(ちなみに彼らの娘がノナ・ゲイで歌手兼俳優、マトリックス・シリーズにも出演しているとか)その後アメリカを逃げ出してしばらくの間の潜伏後1982年に"Midnight Love"(後述)で復活する(ラスト・アルバムとなってしまったが・・・)
1983年にNBAのオールスターゲームでアメリカ国家を斉唱する。これは「ようつべ」で"Marvin Gaye" "NBA" で検索すると見れるが、打ち込み系のリズムに乗って、途中まで聴かないとアメリカ国家だとはわからないほど大胆なアンビエント・アレンジが施されている。賛否両論だったようだが一聴の価値あり。つらいことばかりだったアメリカという国に対する、彼の複雑な思いがこもっているように思う。
"Midnight Love"で復活後、1984年父親と口論の末拳銃で撃たれて死亡。そもそもこの厳格な牧師である父には、虐待疑惑もあり、そのトラウマも彼の破滅型天才的な半生に影響を与えたと思われる。最初のデビューには大反対したようだし。しかし、最愛のジャニスと別れた後は、衝突するとわかっていても、肉親のぬくもりを頼るほか無かったのだろう。しかし案の定悲劇はおきてしまった。