モーツァルト 交響曲第40番 ト短調

フリッチャイ指揮 ウィーン交響楽団(1959)
モーツァルトの40番と言うのは、なかなかいい演奏にお目にかかれない。ある演奏はセンチメンタルで甘ったるく、ある演奏は厳しすぎてモーツァルトの音楽の愉悦が無い、といった具合である。手元にある40番のうちに、ホグウッド指揮エンシェント室内管弦楽団があるが、クラリネットの無い第1版による演奏という資料的価値で買った部分も大きかったりする。
さて、フリッチャイであるが、なんという遅いテンポの第1楽章だろうか、ここまで遅いのははじめて聴いたかもしれない。単純に比較は出来ないが、同じように第1主題の繰り返しをやっている前述のホグウッド盤が7:03 でフリッチャイが9:25である。しかし、大概こういった演奏は奇をてらった感がするものだが、いつも言うとおり峻厳なまでの丁寧さで音作りをするフリッチャイであるから、間延びした感じもしない。第1楽章の悲しさを表現したと言う意味では最右翼の演奏と言える。これは万人に勧められる演奏ではないが、確実に歴史に残る演奏ではある。
PS.この人は本当に木管を大事に演奏させてくれる。木管をオーケストラの添え物みたいに扱っている演奏が多い中、本当に新鮮であるし、木管のパッセージが生きた時、どれだけ音楽が美しくなるかを証明してくれている。