高橋克彦さんの時代劇ミステリー

だましゑ歌麿
おこう紅絵暦

完四郎広目手控
天狗殺し
いじん幽霊
高橋克彦

高橋さんの著書も油断しているうちにどんどん出版されていた。ここに掲げたのはすべて江戸時代を舞台としたミステリー。最初の2作が同心仙波一之進を中心としたシリーズで既に続編「春朗合わせ鏡」が出版済み、後の3作が広目屋完四郎を中心としたシリーズ。最初の1作が長編、あとは全て連作短編。
時代劇でミステリーといえば捕物帳であるが、そこは高橋さん、一筋縄ではいかない。寛政の改革、幕末と時代は違えど、その時代に対する視点の深みがするどい(というか、作者が書きたいのは実はそっちか 「いじん幽霊」は目から鱗
また、単に悪人退治の話は少なく、気持ちのいい結末が多いのも好ましい。登場人物も気持ちのいい人物ばかりである。また、お得意の浮世絵、怪談、からくり、果ては超能力少女まで登場し、他の作品より一般向けながら、高橋ワールドは堪能できる。これで、古代史の秘密まででたら完璧だが、捕物帳にはならんな。
高橋さんの小気味のいいリズミカルな文体は、完成の域に達した感がある。特に江戸が舞台だと効果的。野坂昭如の文体に憧れていたというが、高橋さんオリジナルの文体を確立したと言える。