明智小五郎対金田一耕助

芦辺拓
以前にちらりと書いた作品が文庫化されたので購入。表題作は金田一に分が悪いが金田一が本陣殺人事件前の駆け出し、明智は二十面相との出会い直前の脂の乗り切った時期なので、この扱いは妥当なところか、トリックはこりすぎの感があるが、パステーシュとして原作に負けないようにするためにはこのぐらいしなければならないのかもしれない。
フレンチ警部と雷鳴の城」はクロフツではなく実はカーで、フェル博士とメリヴェル卿が実は・・・・。
「ブラウン神父の日本趣味(ジャポニズム)」トリックとして取り上げられた当時の欧米人の意識については、日本人も知っておいたほうがいい(アーロン収容所とか)
「そしてオリエント急行から誰もいなくなった」これは元の話がわからなければちんぷんかんぷんであろう。
「Qの悲劇 あるいは二人の黒覆面の冒険」ミステリーファンにはおなじみの話だが、クイーンは実はいとこ同士のコンビのペンネームであり、「Xの悲劇」などは当時バーナビー・ロス名義で発表され、片方がクイーン、片方がロスとして覆面をして人前に現れ論争したりした、というかなり茶目っ気たっぷりなエピソードがある。タイトルを見て、そこらへんの話ならいいなと思っていたらドンピシャであった。ありがとう芦辺さん。
「探偵映画の夜」前半はトーキーから始まるあらゆる探偵映画の膨大なうんちく、後半はそれを伏線としたミステリー。
「少年は怪人を夢見る」これはパスティーシュではなく、乱歩にたいするオマージュであの怪人の生い立ちを描く。
以前にちょっと触れた「乱歩の幻影」の第2弾でもあれば「悪魔のトリル」とともに収録してほしいところ。

「グラン・ギニョール城」も既に文庫化されているのを知らなかったので、これから。