緑衣の鬼(1937)

江戸川乱歩
先日書いたとおり「赤毛のレドメイン家」を下敷きとした作品。とはいえ、みごとにいわゆる乱歩的通俗推理小説に生まれ変わっている。その分叙情性が薄れているが、それは乱歩の目的では無かったろうから問題は無い。「赤毛のレドメイン家」を既に読んでいるのだから犯人がわかっていて読むというハンデがありながらも、大変面白く読める。「少年探偵団」のルパンものの拝借といい、こういうことは乱歩は実にうまい。また、乱歩の長編は、通常は筋もうかばないまま連載を始めてしまって破綻する癖があるのだが、こうやって、あらかじめ大筋が決まっている場合は概して大変できがいい。
以下ネタバレ。こういう可憐な淑女が実は悪女というのが最後の最後で判明するというスタイルは、横溝正史のの「真珠郎」をはじめ、後世に多大な影響を残したと思う。もちろん「赤毛のレドメイン家」のほうが。