ドウエル教授の首(1925)

ベリャーエフ
先日の日記のコメント欄で話題になった(こちら)この作品を、現在創元推理文庫をはじめ絶版中なので「黄金仮面」ポプラ社版を図書館で借りたついでに借りてくる。いわゆる早川書房の「世界SF全集」版である。
子供の頃読んだ時は、首だけで生かす方法を、疑似科学でも何でもいいから説明して欲しかった気がして物足りなかった事を思い出した。しかしこの作品は1925年である。欧米ではラヴクラフトの「クトゥルフ神話」の頃、バロウズの火星シリーズは既にあったが、スペースオペラは未だ勃興していない。ミステリーの時も似たような事書いたが、後のハードSF的なものが確立した以降の目をもって、この作品を見てはいけないということだ。SFというジャンル自体も、たぶん確立していない頃で、ラヴクラフトはSF風味のホラー、スペースオペラはSF風味の西部劇、となると、この作品はさしずめSF風味のサスペンスと言ったところか。
のっけからテンポの良い展開はローラーコースター・ノベルの先駆けかもしれない。その分盛り込まれたアイデアも豊富で、主人公が精神病院へ追いやられ、そこの院長に本当の狂気へ落とし込まれそうになるくだりは、そこだけを膨らませれば、単独の小説が1本書けそうなぐらいである。
ちなみに、1984年にソ連で映画化され、DVDも発売されているらしい。