ベローナ・クラブの不愉快な事件(1928)

ドロシー・L・セイヤーズ
こちらも、前半は事件性の疑いはあるものの、果たして犯罪があったのかさえわからない状況で話が進んでゆく、通常のミステリとは違った作品。クリスティも晩年、ミステリーっぽくないが深みのあるミステリーを書いていたが、セイヤーズはすでにそういう作風だったのだな。ちなみにクリスティは「アクロイド」(1926)で世間をあっといわせたのに、なぜか「ビッグ4」(1927)というサスペンスを書いていた頃。
さて、ストーリーが展開するにつれ、各人別個の思惑によってベールがかかっていた部分が明らかになってゆき、物語は二転三転するが、混迷の度合いは逆にを深まってゆく。人間模様も深みがあるし、うーん面白いぞ。こういったタイプのミステリーもあるのだな。普通のミステリーを読みたい人には評判は悪いかも。
次作はいよいよピーター卿の恋人(片思いだが)登場!