毒を食らわば(1930)

ドロシー・L・セイヤーズ
状況から見て殺人罪は確定と思われた女流推理小説家ハリエット、しかし陪審員は意見の一致を見ず、再審が1ヵ月後に行われることになる。その時強硬に無罪を主張したたった一人の陪審員が、誰あろう、「不自然な死」で活躍したピーター卿の聞き込み代理人クリンプスンおばさんその人であった!前作では出ていなかったので「不自然な死」だけのキャラかと残念に思っていたが、また会えてうれしい。法廷で一目ぼれをしたのはいいが、拘置所での面会での初対面でいきなりプロポーズはないだろう!ピーター卿!いたいぞ!
さて、彼女の作品にしては珍しく、始めに事件がある(普通はそうだっちゅうの、劇爆)クリンプスン嬢はピーター卿の出資によりタイピスト嬢斡旋業を始めているが、実は少年探偵団のようなピーター卿の別働隊だったりする。別働隊は大活躍、その一人はピーター卿の知り合いの元金庫破りに、鍵の開け方を教わったりする。その分ピーター卿は出番少なし、だからと言うわけではないだろうが、バッハの「イタリア協奏曲」で(ハープシコードのほうがいいと言いながらも)ピアノの腕前を披露する(爆)「雲なす証言」で登場した妹メアリとパーカー警部のロマンスもありと盛りだくさん。しかし、そちらを楽しんでいるうちに話が終わってしまうのは、良し悪しかもしれない。今までに比べて、若干ミステリー的に物足りない気がするのも確か。しかし、恋をしてピーター卿は明らかに変わってきた。これからが楽しみ。