アイルランド訛り、スコットランド訛り

ピーター卿シリーズ第6作「五匹の赤い鰊」を読み始めているところだが、舞台がスコットランド最南端のギャロウェイである。スコットランドゲール語と英語、スコットランド語(スコットランド訛りの英語)が使われているらしいが、たぶん、この作品にでてくる現地のスコットランド人はスコットランド訛りの英語をしゃべっていると思われる。というのは、ゲール語だと、英語の本に書かれても読む人はわからないだろうということと、邦訳で「〜がです」といった、日本の田舎言葉のように翻訳されているからである。
そうなると、さて、実際はどんな風に書かれているのか興味が湧く。ここで厳密には同じとは言えないのだろうが、参考になるものがちょうど手元にあった。続あしながおじさん(Dear Enemy)である。これは原書ももっている。そして、アイルランド系移民出身の主人公とスコットランド出身の医者が、(冗談で)お互いのなまりで語り合うシーンがあるのだ。以下「ア」はアイルランド訛り、「ス」はスコットランド訛り。まずは邦訳(関西弁ということにしている)。

ア「先生、こんにちは、おかわりおへんか」
ス「ええ、あいかわらずだす。ところで、子供さんたちどないだす」
ア「はあ、おかげさんで、病気もせんと、みんなきげんようしています」
ス「それは、それは何よりだす。(後略)」

原書は以下の通り

ア"Good afthernoon to ye, docther. An' how's yer health the day?"
ス"Verra weel,verra weel.And how gaes it wi' a' the bairns ?"(注)
ア"Shure,they're all av thim doin' foin"
ス"I'm gey glad to hear it"

全く違う風に書いては通じないだろうから、通じる程度に訛りの発音を髣髴とさせるような表記になっているのだろうか?

しかし ye が you なのはまあまあわかるとして、afternoon→afthernoon doctor→docther はアフザーヌーン、ドクザーと発音するのだろうか???アイルランドは"th"を発音しない( t で発音する)とも聞いたぞ。ということはアイルランド訛りだということを強調するためにわざと t を th と表記しているのか??? (そういえば、スリーがトゥリーに聞こえる洋楽があるが、あれは訛りだったのか?)

verra weelは  very wellなんだろうな。 how gaes it は how goes it か??
wi' a' は??? bairns はスコットランド語で子供の事らしい。
Shure は sure だろうが av thim doin' foin となるとお手上げ状態。
gey は very だそうだ。

注:ネット上の電子ブックでは
"Verra weel, verra weel. And how gas it wi' a' the bairns?"
となっている。ネットで"how gaes"で検索すると18世紀のスコットランドの詩人"Allan Ramsay"のページなどが引っかかるから、"how gaes"の方が正しいと思う。

それで、思い出した事があるのだが、あるバリバリのスコットランド人がアメリカへ行ったところ、誰も彼をスコットランド人だと信用しなかったと言う話をネットで見た事がある。どうもアメリカでは「宇宙大作戦」の登場人物「スコッティ」が話す言葉がスコットランド訛りと似てもにつかないのに、スコットランド訛りだと誤って広まってしまったかららしい。