モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」(1968)

ベーム指揮 ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団
以前「フィガロ」の映像の次善策としてショルティ盤をあげたが(こちら)さしずめ、こちらは録音盤の次善策、ベーム、プライ、ヤノヴィッツが共通している。どうも最近思ってきたのだが、レコードというものが始まってからの(特にモーツァルトの)オペラの演奏スタイルは、何か一つの流れを持っていたような気がする。つまり、「名歌手に自由に歌わせ、指揮者はそれをとりまとめる」から「指揮者がコンセプトをもってオペラ全体を構築し、歌手はそれに従う」を経て「指揮者がコンセプトをもってオペラ全体を構築するも、歌手もそれに従った上で自分の個性を主張する」に至る流れである。これは、指揮者というもの、歌手と言うものの全体的な質の向上というか成長によるものだと思う。で、ある説によると、3番目のスタイルが1980年代にピークに達して、それ以降の突破口が見出せないでいるのだとか。
何が言いたいかというと、上記のベーム盤は時代的に2番目のスタイルなのだ。で、それ以前の名盤といわれるものをいくつか聞いてはいるのだが、やはりモーツァルトの音楽に乱れがあって欲しくないというのがあって、どうしてもいいとは思えないのであった。
そして、今度出る1980年日本公演は3番目のスタイル、歌手が歌と演技に夢中になってテンポが上がり、オケを追い越してしまう部分もあるのだが、老いても名手、ベームはきちんとつじつまを合わせるのだった。
ちなみに、CDではポップがスザンナをやるショルティ盤があるのだが、レイミーがフィガロ(この人はドン・ジョヴァンニでしょう)やカナワ(この人はどうも好きになれない)が伯爵夫人ということもあって躊躇していたが、今は廃盤のようだ。