モーツァルト歌劇「フィガロの結婚」K.492 カール・ベーム指揮 ウィーン国立歌劇場日本公演 1980年

待望のDVD化である。細かい話はおいおいと(なんせ、カテゴリを作ってしまったから【劇爆】)
当初は、TV音源かと思って音質を心配していたのだが、生でFM放送された音源を映像にシンクロさせたとか、ありがたい!(おかげで、終幕の後拍手は延々続くが、映像が無くなってしまい、舞台袖から撮ったカーテンコールの写真が差し込まれている。当時の日本の観客がどれだけ熱狂したかが、この拍手の長さでわかる)
グンドゥラ・ヤノヴィッツの伯爵夫人に、ルチア・ポップのスザンナに、ヘルマン・プライのフィガロに、ベルント・ヴァイクルの伯爵に、クルト・リドルのバルトロに、そしてアグネス・バルツァのケルビーノ!に27年ぶりに再び会えた!(スザンナのセリフではないが、「私みたいな幸せ者は他にいないでしょう」である)脇役を含めて、歌も演技も生き生きとして完璧である。完璧と言えばウィーン・フィル。超一流のオケに対しての言い草ではないかもしれないが、この超一流のオケにしてもさらに完璧である。全体にテンポはゆっくり目だが、躍動感は失われていない。かえってモーツァルトの音楽の美しさが堪能できる(元々私はゆっくりめのモーツァルトが好きだし)第13曲の三重唱のスザンナの上昇メロディは、このぐらいのテンポで初めてその美しさがわかるし、ポップ以外にこれ以上に完璧にこのフレーズを歌っている歌手を私は知らない。ラストの懺悔のテンポは存在するフィガロの中でも最も遅いと思うが、その美しさは至上のものになっている。
そもそも、この映像で初めてベームに接して、それ以降全盛期の演奏をいろいろな曲で聴いたのだが、結局この演奏ほどの感動を彼から得たことは無かった。まさに亡くなる寸前に達した境地なのか?
演出も深刻になり過ぎない、演者がのびのびと演じられる好ましいもの。ケルビーノが伯爵夫人に言い寄る時、たいがいは夫人もケルビーノによろめきそうになる演出なのだが、ここでは笑いながら鼻であしらっている。このほうがこのオペラの本来の趣旨にあっていると思う。
何べんも言うが、これ以上のフィガロを私は知らない。生まれて初めて接したフィガロがこの映像であったこと、そして27年の時を経て、再びこれを見られたことを、素直に神に感謝したいと思う。
細かい続きは、明日以降書きます(まだ書くのかい、と言われても!)
最後に訂正、ヤノヴィッツの「アアア」はしめしめと言った感じと書いたが記憶違いだった。茫然自失の「アアア」であった。