モーツァルト歌劇「フィガロの結婚」K.492 カール・ベーム指揮 ウィーン国立歌劇場日本公演 1980年

さて、気がついたことを思いつくままに書く。
昔、テレビ音源からテープに録音して、しばらく聞いていた時期があったのだが、その時はプロンプターの声がかなり耳障りな印象があったが、今回はかなり目立たなくしている。レチタティーボの時はもろ聴こえであるが、いたし方の無いところだろう。
全体的に間が良い。というか、たっぷりとってあるのがうれしい。例えば、借金のかたにフィガロに結婚をせまっていたマルツェリーナが実は実の母だったとわかる抱腹絶倒の第18曲の六重唱、フィガロ「こちらが私の母」スザンナ「この方が?」のあと「そしてこちらが私の父」と歌う時、大概は間をおかないのだが、たっぷり間をとって観客が笑う時間をちゃんととってくれている。その父であるバルトロ(クルト・リドル)は手をひらひらさせながら舞台右から左へ駆けてゆく・・・(爆)
その六重唱直前の伯爵と裁判官の「母だって?」のレチタティーボ、"Sua madre?"が、声を合わせてどもるように"Sua Sua Sua Sua Sua" そして間があって "Sua madre?"と変えてあるのは、この演出だけだろうが私の大好きな場面。
ケルビーノのバルツァは本当に贅沢だ、演技も歌もケルビーノ役を超えてしまっている。肩出し大サービスは今見てもドキッとする。きょとんとした顔のかわいらしさはたまらんな。
最愛のリリコ、ポップとヤノヴィッツについては、常に語っているので付け加えることも無いのだが、ゆっくりめの「手紙の二重唱」ある意味よく似た声質の二人ならではの極上の美の世界である。で、やはり19曲のヤノヴィッツのアリアは、彼女以上の歌手を私は知らない(シュワルツコップでさえ私にとってはヤノヴィッツより下である)
ヴァイクルは、フィガロに「おまえ、足をくじいていたのではなかったのか?」と歌う時、なんとピョンと飛び跳ねた!けっこうひょうきんではないか!