ドロシー・L・セイヤーズ
まだ途中
完成された長編では最後のピーター卿シリーズ、ただし戯曲の小説化というところが読む前に気になるところだが。また、これのみハヤカワということで翻訳の文体、名前の表記等の違いも気にかかる。やっぱピーター卿は「閣下」ではなく「御前」でしょう。ああ、版権も切れて創元でも出せるようになったというのに、浅羽莢子さん、なぜ亡くなった。
さて、序章としてピーター卿のまわりの人々のやりとりする手紙により、ピーター卿とハリエットの結婚が語られ、次にピーター卿の母上(こちら)の日記が差し込まれるのだが、まさに「学寮祭の夜」の最終シーン(日曜の夜)の翌朝から始まっているのがうれしい!ピーター卿から喜びの連絡があり、さらに翌日(火曜)にハリエットが母上を訪ねてくるのだが(ピーター卿は相変わらず政府関係に呼ばれて多忙)母上はハリエットが日曜の夜からその日まで、ほとんど寝ても食べてもいないことを見抜く。そこまでとは言わないが、結婚前八戸にいる今の奥さんに、東京から電話で告白しOKをもらった時は、その後全く寝られず、翌日も出社したものの午後休をとって帰宅した、と言う経験があるので、よーくわかるぞ、ハリエット!(年取ってからの恋愛ってこんなもん?)
よく考えたら、ピーター卿、ハリエット、バンターの本格的な揃い踏みはこれが初めてだ。もしかして、意識してこれまでハリエットとバンターを絡ませなかったのかな?だとしたら効果抜群。
ピーター卿が買った新婚旅行先のハリエットの故郷にある古い農家の屋敷。煙突が詰まっている?なるほどここに死体か、と思ったら見事にすかされた。セイヤーズ女史のほくそ笑む姿が目に浮かぶ。続きは読了後。