ワーグナー トリスタンとイゾルデ

クナッパーツブッシュ指揮 バイエルン国立歌劇場管弦楽団(1950)
いよいよクナである。比較的若い時代なので、1960年代の演奏が聴きたかったし、当時のライブ録音にしてはまずまずの音質だが、低音が寂しい。しかし、録音が残っているだけでよしとしなければならないだろう。
実は、これを一番に聴きたくて聴きたくてたまらなかったのだが、なるべく他の演奏を聴いてから比較できるようにと、クライバーフルトヴェングラーを先に聴いたいたのだ。2週間待ったことになる(笑)
前奏曲は驚くほど遅いテンポで始まるが、いつのまにかテンポは上がっている。お得意の自然アッチェレランドだ。この人はいくら遅くても遅すぎると言う感じがしない。本編に入ると今度は意外に速いテンポだが、やはり速すぎるという気がしない。
以前フルトヴェングラー盤を「間然するところがほとんど無い」と書いたが(こちら)唯一欠点としてあげるとすると、第1幕前半がけっこうダレる点である。なので、最初に聴いた時は、「おや?」と思ったのだが、それ以降、それを補って余りある演奏だったので、あえて触れなかった(もちろん、後半との対比をねらったという見方もできるが)が、そういった欠点はクナには無い。
また、クライバーなら同じ速さでもスピード感を感じるところだが、クナはどこまでも自然で、そういう音楽に聴こえてしまう。
そう、隅々まで自然に音楽が生きているのだ、この人の場合は!やはりクナはクナだな。これで、もうひとつ音がよければ言うことは無いんだが・・・・各幕の前奏曲が、オケだけなので、オケが充分に前面に出ているので、すごさがわかるのだが、歌が始まるとどうしてもオケが奥に引っ込んで、すごさを拾いきれていない感あり。隔靴掻痒、かえすがえすも惜しい。