夜歩く(1949)

横溝正史
横溝正史はむちゃくちゃファンというわけではないので、全てをよんだわけではない。
個人的にはどうしても映画化された「金田一耕助」シリーズの印象が強いので、映画化されていない「金田一耕助」シリーズ、また「金田一耕助」シリーズ以外のシリーズや、ノンシリーズは「真珠郎」等数えるほどしか読んだことは無い。
しかし、ジョン・ディクスン・カーの「夜歩く」と同名タイトルの、(内容も)とんでもない作品があるということをネット上で知り、古本屋で購入したものの、これもつん読状態だった。
さて、一般に言われているとおり、この作品のメイン・トリックはあまりにも有名な某海外作品のメイン・トリックの流用である。
なので、その作品が発表された当初のように「ずるい」という意見もあれば、流用ということで「パクリ」よばわりする声もある。
しかし、「メイン・トリックの流用」をしたのにもかかわらず、ここまで見事に作品世界を構築し、伏線やらなにやら細かくきっちりとやられると、これはもう見事としか言いようがない。
「メイン・トリックの流用」がゆえの二流作品におちいらず、読み応えのある別作品を作った事を褒めたい気がする。
横溝さんは、このトリックで一度書いてみたかったのだろうし、書くとなったら、よほどの作品でなければパクリ呼ばわりされるから、きっと力を入れたんだろうな。
いい意味でこの人もディレッタントの一面をもっているのだろう。
この作品が一連の「金田一シリーズ」に比べ、地味な扱いになっているのはなんでだろう。
やはり原作どおりには映像化が難しいからかな。それともやはり「流用」のせいなのかな。