人形佐七捕物帳(光文社文庫)

横溝正史
平次とともに古本屋で買った光文社編の傑作集。
綺堂の怪談等残っているのだが、かなり前に買ってあったので、とりあえず片付けるために(失礼)読む。
解説にもあるが、さすがに横溝正史だけあって捕物帳の中では本格色が強い。佐七の推理が、というより、犯人の犯罪の仕立てが凝っているのである。さすがに第1作がクリスティの「ABC」仕立てというのはご愛嬌だが。
「双葉将棋」の詰め将棋暗号はけっこううならせられる。
「風流六歌仙」は現代物にありがちな川柳の「名探偵 皆を集めて さてと言い」のパターン。謎は解くが最後の犯罪は防げないのは後年の金田一のパターンだ。いや、殺されるのが悪だから、わざと見逃したか?
また、平次と子分のガラッ八のやりとりも面白かったが、こちらは佐七、辰のコンビに上方出身のうらなりの豆六が加わってユーモラスさが増している。
後続の有利さもあろうが、単純に面白さ、エンターテイメント性からいったら半七、平次の上を行くかもしれない。(勿論半七、平次の良さはそれ以外にもあるわけだが)
金田一シリーズは読んでいても、佐七は読んだことが無いという人がいたら、だまされたと思って一読をお勧めする。
(ただし、不要なエロ描写がある作品もあるので、要注意(笑))
少し前にはけっこう店頭でも古本屋でも春陽堂の人形佐七シリーズは見掛けたものだが、最近はとんとお目にかかれない。今思えば買っておけば良かったと思うが、当時はまったく捕物帳には興味がなかったからいたしかたない。