You're Going to Lose that Girl

The Beatles
さらに思い出したので書いておく。
「ヘルプ!」に収録されている、今ではちょっと邦題がイタタなこの曲であるが、私はビートルズ聴き始めの頃から、(もちろん他にも名曲はあるのだけれど)とてつもなく凄い曲だとずっと思ってきた。なんでもっと世間ではさわがないのかと思っていた。
それはコード進行である。(ウィキペディアでは転調が4回あるとし、その4回目を「斬新」としている)
オリジナルキーは Eメジャー(ホ長調)であるが、わかりやすくするために、ハ長調として書く。
サビ前までは
C Am Dm7 G7
の定番の循環コードであるが
サビ前に
Dm7からB♭へ転調(1回目)
そして、B♭をドミナント扱いして
E♭A♭E♭
変ホ長調へ転調する。(2回目)
結果的にハ長調から変ホ長調へ転調するのは、まあ、関連調だからそう突飛でもないが、
Dm7からB♭へは、Dm7をB♭のサブドミナントの近親短調とみなしてのことだが、共通する2音以外は1音が半音あがるだけだが、それまでハ長調の流れで来ているがゆえにその落差(いや上昇)感は効果的である。
そしてサビの後半が
E♭A♭D♭
と、E♭に対するドミナントであるA♭をドミナント扱いして、一瞬変ニ長調へ転調し(3回目)、すぐさま元の
C Am Dm7 G7
という ハ長調に戻るのだ。(4回目)
この半音下がりの強引な転調の落差感はとてつもないが、そう不自然に聴こえないのは、D♭はハ長調のサブドミナントであるF音を含んでいるせいかもしれない。
ラストは上記サビ前の
Dm7からB♭へ転調
の後、すぐさま ドミナントのF に行き、そのF を元々のハ長調のサブドミナント扱いにして、あたかも転調をなかったことのようにして元々のトニックの C で終了するのだ。

ここの肩透かし感もすごい。