孔雀狂想曲(2000)

北森鴻
繰り返しになるが、公認サイトの人気投票で作品、キャラともに「蓮丈那智」「冬狐堂」を抑えて1位の作品である。どこにこの作品の人気の秘密があるのか、という気持ちで読んでしまう。
基本的には「冬狐堂」のように、贋作を含めて狐と狸の化かし合いのおどろおどろしい世界なのだが、人々が救われ行く話しもけっこうある。女子高生押しかけアルバイターの安積とのユーモラスなやりとりと相俟って、そこらへんが人気の秘密かもしれない。
「雅蘭堂」シリーズ(本書)はこれ一冊で、後は主人公「雅蘭堂」店主越名が、他のシリーズに顔を出すだけだが、できれば続編が読みたいところ。
話は個人的なものになるが、作品中バイトの安積が友人にアンディ・ウォーホールのポスターのオリジナルを三千円で売ってしまおうとして越名があわてて止めるシーンがある。
私も一人暮らしをしていた二十歳を過ぎた頃、古本の青空市で「カムイ伝(映画化されて話題の「カムイ外伝」ではない)」の伝説の100ページ連載時の漫画月刊誌「ガロ」が何冊か、なぜかお安い値段がついていて「これはお宝だ!」と購入し悦に入っていたのだが、バイト中に連絡もなしにぼろアパートにやってきていた母親に「なんか古い漫画があったから売り払っておいた」と勝手に売られてしまって、腰をぬかすほどがっかりしたことがある(笑)自慢ではないが私の母親はそういった事にはまったく無知、かつ漫画に価値を認めない世代である。説明してもとても理解はしてもらえまいと、泣く泣くあきらめたのを覚えている(笑)