ワルター・ベリーの話

モーツァルトドン・ジョヴァンニ
フルトヴェングラー指揮,ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1954)

若い頃、オペラのLPなどそうそう買えるものではないから、「ドン・ジョヴァンニ」はこればかりを聴いていたために、現在速いテンポの「ドン・ジョヴァンニ」を受け付けなくなっている(笑)

今回は、当時25歳だった後の名バス、ワルター・ベリー(ヴァルター・ベリー)について。
この人は本来バリトンの声域のような気がする。その証拠にここでのマゼットでは、フォルテの部分を自分が出しやすいような高音域をわざと歌っている。それが耳障りで、けっこうこの公演での彼の出来は良くないような気がする。
何でバリトンにならなかったのか、習った先生かなんかにバス向きだと言われたのかな?
しかし、その後歳を重ねて、低音域もきちんと朗々と歌うようになり、芸達者もあいまって名バスになる。
「ばらの騎士」の男爵は、高い G# を伸ばす部分が1箇所ある。これはバリトンの音域でバスの音域ではない。シュトラウスも、ここはわざと高い音を書いて、声が裏返ったりするユーモラスな効果を狙ったはずである。
しかし、ワルター・ベリーはここを無理なく朗々と出す(笑)やはりベリーがバリトンの音域まで網羅している証拠である。ここまで無理なくここを歌っているのは彼以外に知らない。なので、シュトラウスの狙った効果は台無しだが、やはりたいしたものだ。