絵草紙うろつき夜太

柴田錬三郎 横尾忠則
以前ちらっと書いた(こちら)「うろつき夜太」であるが、連載時と同じ大きさの、最初の大判が、現在えらい高値がついている。
しかし、やはりこれで読まねば意味が薄れるので、いつか再版になるか、適正価格になるのを待ちたい。
しかし、その前にこの本を楽しむなら、現在は横尾忠則のイラストをそのまま文庫サイズに縮小したもの(プラス当時の絵のモデル写真の撮影風景)が1冊、そして柴田錬三郎の小説の部分のみで上下2巻の文庫が出ているので、それを交互に見ながら、読み進めるしかない(笑)
(面白いといってはなんだが、横尾さんのイラスト本はまあまあ高値がついているが、シバレンの小説は上下とも 1円である・・・出版当時の知名度とは、現在逆転してしまっている)
さて、この作品は、柴田錬三郎横尾忠則が、お互いインスパイヤしながら、ある意味いきあたりばったりに進んでゆく物語で、音楽で言うアドリブ、インプロヴィゼーション満開の作品である。
当時十代の私は、たいして時代小説に興味があるわけでもなく(笑) 柴田錬三郎なぞ、過去の人と思っていたから(失礼な話だが)横尾忠則めあてで、読んでいたのだが、両者のはじけぶりが半端でなく、連載終了後に出版された大判も、少ない小遣いをはたいて買ったものだった。
今回始めて知ったのが、時代劇のイラストが初めてだから、モデルで写真を撮って、それを元にイラストを描きたい、と横尾さんが、スタッフに頼み「田村正和をお願いします」と大層な事を行ったところ、所属事務所から「田村正和はスケジュールが取れないが、弟の田村亮なら空いている」ということで、田村亮を使って写真をとったというくだり。
文庫版には、その田村亮の撮影風景もふんだんに載せられている。言われてみれば、夜太は確かに田村亮である。
あと、柴田錬三郎が「頭脳がカラッポになった」と読者に詫びを入れる部分「横尾忠則氏が、さて、どんなさし絵にしてくれるか、いまは、神のみぞ知る」と書き、その部分はしっかり柴田錬三郎が煙草を吸っているイラストが載せられていたり、横尾さんも(効果を狙っているんだろうが)完成前のイラストをわざと載せたり、また、主人公の夜太が柴田錬三郎に電話で文句をつけたり(その時のイラストは、夜太がホテルのバスルームのトイレのふたに腰掛けて電話している)まあ、通常の時代小説では考えられないはじけっぷりで、ある意味SFとしても楽しめる。
ただ、当時も思ったのだが、オランダの軍人ジョン・ペパードが、明らかにビートルズの「サージェント・ペパーズ〜」のアルバムジャケット(中)のジョン・レノンであるのが、違和感というか、ジョンのファンとしては、こういうところに引っ張り出して欲しくなかった気がしたものだ。
で、今は読んでいる最中