ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」

カルロス・クライバー指揮 バイロイト祝祭管弦楽団(1974)
トリスタン:ブリリオート
イゾルデ:リゲンツァ
ブランゲーネ:ミントン
マルケ王:モル
前奏曲についてはこちら。「愛の死」についてはこちら
本編を聴き始めると「トリスタン」って、こんなんにもすっきりとして見通しが良くてわかりやすい、聴いていてワクワクしてくる楽しい曲だったかしら、とびっくりする。(ここらへんが室内楽的と言われて好みが分かれるところなんだろうな)
いろいろな「トリスタン」を聴いた後にクナを聴くと、その自然な息遣いにほっとするのだが、クライバーは運動慣性としての躍動感が自然なのだ。その点ではこのバイロイト盤はドレスデン盤を凌駕しているといえる。勿論、ドレスデン盤の精緻な音作りは無敵ではあるが。
さてリゲンツァのイゾルデであるが、今まで聴いたイゾルデは、どこかかしら耳障りな部分があって、それが不満であったが(現時点で、ヴァルナイの全曲盤を聴く前であるが)耳障りなところが一つもない。実に素直に耳に入ってくる声である。ここらへんがクライバーが気に入ったところなんだろうな。
それに比してブリリオートはあまり評判がよろしくない。最初はどこが悪いのかと思っていたが、3幕に入りスタミナ切れなのか不調なのか、つらそうになってきて、怒鳴り声やファルセットで凌いでいる。時折声が裏返る。
モル、ミントンは完璧。ミントンやファスベンダーが現れて、ワーグナーのアルトやメゾが、おばさん臭くない若々しい声に変わってきたような気がする。
不満は「愛の死」で聴こえて欲しいフレーズが埋もれてしまったこと。バイロイトだからしょうがないけど。