銀の枝(1957)

ローズマリー・サトクリフ
アイクラ家のイルカの指環シリーズの第2作。時代は紀元3世紀末、ローマ皇帝は、マクシミアヌス帝(分割統治)ブリテンでカロウシウス(カラウシウス)が皇帝を名乗っていた時代。
この「カラウシウス」については、寡聞にして初めて知った。今まで読んだ古代ローマ史関連には、まったく登場しなかったからだ。日本のウィキペディアでも独立した項目がない。ギボンの「ローマ帝国衰亡史」にも一言も書いていない(と思う 手元にあるのは抜粋の普及版)
たぶん、ローマ本国からしたら、辺境ブリテンの、記述するにも値しない、ごくごく小さな反乱事件だったという事なんだろうか・・・・
カラウシウスは、ローマに未来が無い事を見抜き、ローマが倒れる時にブリテンが共倒れにならないように、全部族をまとめてブリテンを国として確立しようとした人物として描かれる。
カラウシウスは、腹心の部下アレクトス(アレクタス/アッレクトゥス)に裏切られ殺される。
主人公(達)はアレクトスの陰謀を未然にふせごうとして果たせず、アレクトス打倒のために地下に潜る。
「第九軍団のワシ」同様に、後の作品よりスリルやサスペンスに負う所が多いし、最後の決戦のカタルシスもあり、やはり面白さは抜群である。しかしその分明快といえば明快、「ともしびをかかげて」の一種の暗さをもった深みの境地には、未だ達していない。