グルック「オルフェオとエウリディーチェ」

リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団(1967)
オルフェオ:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
エウリディーチェ:グンドゥラ・ヤノヴィッツ
アモーレ:エッダ・モーザー
グルックと言う人は、音楽史上は「オペラの改革者」というのが(今はどうか知らないが)肩書きであった。これも問題があって、読む者に「グルック以前のオペラは聞くに値しない」という無意識の刷り込みがなされてしまう。
しかしどうも例の「ドイツ的価値観」による音楽史のために、発掘され持ち上げられた、という説もある。
しかし、聴かない事には何とも言えない。さてどれを聴こうかと探したところ豪華キャストのヤノヴィッツ盤があるではないか!(笑)輸入盤は値段も手ごろ。しかし、主役のアルト(もしくはカウンター・テナー)をバリトンに置き換えてある。
ちなみにグルックはあの「奥様女中」のペルゴレージの4歳下の古典派最初期の作曲家である。
さて、聴いてみると確かに余計な装飾音も無く、しっとりした曲が多い。合唱や管弦楽のみの演奏の比率も高く、オラトリオと言ってもいいかもしれない。ワーグナーの遠い祖先というのも納得。確かに当時こんなオペラを書いたら「オペラの改革」と言われるのも当然だな。しかしその改革が実を結ぶのは、ウェーバーあたりまで待たなければならなかったが。
個人的には、大変気に入った。「オペラの改革者だ」「いや、ドイツ的価値観によるもち上げだ」とか言う以前に、聴いて良いと思うなら、それでOKではないか。1時間半強とコンパクトなところもいい。

フィッシャー=ディースカウは、悪達者な歌唱が個人的には苦手なのだが、この演奏では別人のような真摯な歌唱で、いつもこう歌えばいいのにと思った。
ヤノヴィッツは全3幕中出番が第3幕なので待ちくたびれるぞ(笑)出番も少ないし(涙)
序曲後の合唱からしてもう当時のオペラとは異質。フルトヴェングラー指揮でどうぞ。