ワトスン夫人とホームズの華麗な冒険(1980 翻訳 1982)

ジャン・デュトゥール
先日触れた(こちら)ホームズのパスティーシュをユーズドで入手した。
原題を"Memoires de Mary Watson"(フランス作品)といい、明らかに"The Memories of Sherlock Holmes"のもじりである。
ならば邦題も素直に「回想のメアリー・ワトスン」とすればよかったように思うが、それだとコアなファン以外はホームズのパスティーシュだと気がつかない、ということなのだろうな。でも「回想のメアリー・ワトスン」のほうがセンスがいいと思うが。
なので、ホームズのパスティーシュだと思って読み始めると肩透かしを喰う。3部構成のうち、ホームズ達が登場するのは第2部から。あくまで「回想のメアリー・ワトスン」なのだから、第1部はメアリーの半生が語られる。
しかし(解説頼みになるのもなんだが)「(前略)独創的なパロディ、凝った冒険談であると同時に、芸術的・歴史的・文学的全体像、ヴィクトリア女王時代の習俗の魅力的な戯画」ということで、なかなかに深みが合って読み応えがある。
ちなみに文庫化はされていない。