ヴェルディ「マクベス」

デ=サーバタ指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団(1952)
マリア・カラス
エンツォ・マスケリーニ
ジノ・ペンノ

タイトルからわかる通り、シェークスピアの「マクベス」である。このおぺらの存在は知っていても、今まで一度も見たり聞いたりした事はなかった。「ナブッコ」の5年後「椿姫」の6年前の作品になる。
実は「ナブッコ」であまりに人気が沸騰したために、休む間もなくオペラを書き続けさせられたようで、さすがにドクター・ストップがかかり、数ヶ月の休養後にじっくりと書かれたのがこの「マクベス」との事。(その連作の時期に「エルナーニ」「アルツィーラ」「アッティラ」が含まれる)
のちに「オテロ」や「ファルスタッフ」を書いているが、ヴェルディのシェークスピアに対するリスペクトはそうとうなものだったらしく、時代考証のためイギリスへ行ったり、衣裳にも口出ししたり、歌手には、メロディよりも「詩」に従うよう指示をするほどだったようだ。たぶん、ここら辺からヴェルディ独特の「ドラマティック・オペラ」が萌芽してゆくのだな。
マクベス」はフランス上演用に改訂され、現在はこの版のイタリア語版による上演がほとんどだが、改訂時に追加されたバレエ音楽はカットされる場合があるとのこと。ただし、この録音ではちゃんと演奏されている。
ストーリーはほぼシェークスピアの原作どおりなので省略。
音楽は、ストーリー同様スリリングさに満ちている。通常のオペラとは一味も二味も違う。ヴェルディが長年「音楽とドラマの融合の自信作」としたのもうなずける。

カラスは、メデアといい、カルメンといい、いわゆる悪女を演じると正に鬼気迫るものがある。
音はあまり良くなく、カラスの「マクベス」の唯一盤であるが、それでも名盤扱いなのは、このカラスの歌唱のせいらしい。