小松左京 日本アパッチ族

小松左京  日本アパッチ族(1964)
小松左京と言えば、普通は「日本沈没」だろうか「さよならジュピター」だろうか、はたまた「復活の日」だろうか。しかし、私にとってはだんぜんこの「日本アパッチ族」である。
以前にも書いたが、私は身の回りのものがほとんどなくなった時期があり、その後この「日本アパッチ族」を買いなおそうとした時は、もう古本屋にも見かけなくなっていて、そのまま忘れてしまっていた。最近ふと思い出して調べてみたらハルキ文庫から目出度く復刊されていたので購入した。
初めてこの作品に触れたのは中学時代で、ある教師がこの作品のあらすじを、終戦直後にあたかも実際にあった話のように我々生徒に語っていたのだが、いわゆる「生徒をかついだ」のであった。左翼丸出しの教師だったので、そっちへ引きずり込もうとの魂胆だったのかもしれないが、この小説を左翼小説ととらえるのは、三島由紀夫の「憂国」を右翼小説と断じるくらい勘違いも甚だしい。(ちなみに「憂国」はSM官能小説であろう)
とにかく「先生の話の元ネタはこれらしい」という情報でこの本を買って読んだ時の衝撃は、小学校時代からジュブナイルSFをバカにして、通常のSFを読み始めていた中学生にとっても大変なものだった。