クリフォード・D・シマック「大宇宙の守護者」

クリフォード・D・シマック「大宇宙の守護者」(1939)
シマックの処女長編である。これはハヤカワ文庫(1975)であるが、1978年に別の出版社から発売された時のタイトルが「スペース・ウォーズ -宇宙十字軍」で、あきらかに「スター・ウォーズ」(日本公開 1977年)に便乗した、イタタなものであったようだ。
そう言う点からもわかるとおり、これはスペース・オペラである。実はシマックは「都市」(1952)以前はスペース・オペラ作家であったのだ。
さて、こういう古臭いSFも久々だな、と思えるチープ、かつご都合主義的な設定や展開を我慢しながら読み進めてゆくと、徐々に話は気宇壮大になってきて圧倒されてくる。しかし、いわゆるスペース・オペラ的ドンパチは申し訳程度。
つまりスペース・オペラ全盛期の「SFを書く=スペース・オペラ」だった時代に、シマックが自分が書きたい内容を、無理やりスペース・オペラの形式に押し込んでしまった感がある。
なので、スペース・オペラ的にはどうかと思うが、実に興味深い作品である。
ある人が「シマックはSFで語る」と書いていた。
シマックの作品に共通するテーマがわかってきたが、それは実は、人類の行く末、文明の行く末、宇宙の行く末である。普通はそれらをテーマにしてSFを書く。しかし、シマックは「SFで」それらを語るのである。ある意味彼もワン&オンリーの作家なのかもしれない。