クリフォード・D・シマック「小鬼の居留地」

クリフォード・D・シマック「小鬼の居留地」(1968)
だまされていはいけない。
中表紙の作品紹介欄の「ユーモアと幻想味溢れる牧歌的作風で描く」という文章に。
だまされてはいけない。
あまのよしたか(天野喜孝)の秀逸な挿絵に。
だまされてはいけない。ネット評の「ドタバタ・コメディ」という表現に。
「大宇宙の守護者」はスペース・オペラにしてスペース・オペラにあらず。
「再生の時」はジェットコースター・ノヴェルにしてジェットコースター・ノヴェルにあらず。
同様にこの作品も、スプラスティック・ファンタジーにしてスプラスティック・ファンタジーではない、相変わらずのシマック的深淵で深刻なSFなのだ。
しかし、とっかかりとしては上記の方向から入ってもらっても全然問題ないと思う。というか、それこそがシマックの望んだことだったろう。
しかし、つくづくよく出来た作品だ。シマックの作品でなんらかの賞を獲っているのは「都市」「中継ステーション」と、この「小鬼の居留地」だけ(邦訳分)だったと思う。むべなるかな。

この作品は、坂田靖子あたりに漫画化してほしいな。