モーリス・ルブラン「赤い数珠」

モーリス・ルブラン「赤い数珠」
この作品はルパンが登場しないのだが、次作「カリオストロの復讐」に登場するルースラン予審判事が主人公。それだけなら今回読まなくても良いところだが、実は純粋ミステリーとしてルブラン最晩年の傑作である、という評価なので読んでみる。
確かに雰囲気は、もう既に始まっていた本格推理ものである。正直密室殺人トリックは、推理小説をよく読んでいる人にはお馴染みのもので、けっこう早く気付く。
しかし、それでこの作品の価値が下がるわけではない。なんとなれば、このトリックの発信元がここかもしれないのだ。
さらに、物語の面白さ、人間模様の深さ等、ルパンを書く前は心理小説を書いていたというルブランの面目躍如たるところだろう。
こういう作品も書けるのに、ルパン・シリーズのしがらみがあるのでこういう作品を書く暇が無かったとしたら、他にもこういう作品がもっと書けたのかもと思うとちょっともったいなかった気もする。
ミステリーは好きでもルパン物はちょっと・・・・という人がいたら、超お勧め。
PS.ちなみにルースラン予審判事は探偵役ではなく、この事件の当事者達がそれぞれの段階でその役を担う、というのもユニークな点かも。