北村薫「朝霧」(1998)
「円紫さんと私シリーズ第5作は、また中編集(3作)の体裁に戻っている。
私は最初作者は「円紫さんと私シリーズ」は前作で終わらせるつもりだった、と思っていた。それまで「私」の時系列に合わせて1年に1作のペースだったこのシリーズが6年(執筆としては3年)開いているからだ。だから「私」も少なくとも前作から3年経った状態の作品かと思っていた。しかし「私」は前作直後の状態から始まっているし、本作の伏線が「前作」で張られたりしているので、単純にこのシリーズ以外の作品の執筆が増えて、時間が取れなかっただけなのか?。
どちらにせよ「私」の恋を予感させて、このシリーズは終わった、と見ていいだろう。そのお相手こそ、例の
http://hakuasin.hatenablog.com/entries/2014/06/02
もらったチケットでインバル指揮、東京都交響楽団によるベルリオーズの「レクイエム」を聴きに行った際に(偶然?)隣に座っていた彼氏だったのだ。
以前にも書いたが、落語や歌舞伎の江戸文化、古今東西の文学作品等々、作中人物によって語られる文化的解釈は醍醐味があり、それだけでも知的サスペンス的に充分読み応えがある。