「剣客商売」小説と漫画

剣客商売」小説と漫画
毎度の事ながら「剣客商売」を読んでいる。池波正太郎の小説は順番に読んでいるのだが、大島やすいちの漫画版は、入手順序がばらばらだったので、作品によっては小説版が先だったり、漫画版が先だったりする。
気に入った作品は、小説版を読んでは「漫画版はここをどう表現していただろう」と漫画版を読み返し、読み返しては「小説版はここをどう表現していただろう」と小説版に戻ったりする。
漫画版は、かなり良心的に原作に忠実である。忠実なればこそ、小説と漫画という表現方法の違いにより、その表現方法にそった、より効果的な表現をするので、そこに差異がうまれ、その差異をまた、読む方は楽しむわけである。
例えば、大治郎と三冬が結婚する決め手となる「品川お匙屋敷」であるが、抜け荷(禁制の密貿易)の組織に拉致監禁された三冬を、大治郎が救う場面であるが、小説では大治郎が監禁場所の屋敷に火を放ち、焼け跡の地下室から三冬を救い出す。
漫画版では、焼けている最中の屋敷から大治郎が三冬を抱いて飛び出してくる。
漫画の内容を小説で書けば嘘くさくなるし、小説の内容を漫画で表現すればいかにも物足りない。そこらへん、大島やすいちのセンスが光るところである。