内田康夫「平家伝説殺人事件」

内田康夫「平家伝説殺人事件」
内田康夫第5作にして「浅見光彦」再登場の作品である。
この作品をあえて「浅見光彦シリーズ」と呼ばないのは「後鳥羽伝説殺人事件」で書いたように、作者は浅見光彦をこの作品までしか登場させないつもりだったからである。
その証拠に、後に「浅見光彦シリーズ」のパターンとなる「浅見光彦の恋愛話」がこの作品から登場するのだが、シリーズでは成就する事の無い彼の恋愛が、この作品では成就することを示唆して終わっているからだ。
ところが、である。手元には花村えい子によるこの作品の漫画バージョンがあるのだが、こちらは「浅見光彦シリーズ」としての漫画化なので、恋が成就しないように改変されている!まあ、シリーズの統一感を持たせるためにはしょうがないのだろうが、原作を改編というのはいかがなものか。
それはさておき、作品としては「倒叙」風に始まりながらも二転三転する多重構造がなかなかのものである。