ワーグナー「ローエングリン」
クナッパーツブッシュ指揮 バイエルン国立歌劇場管弦楽団(1963)
ハンス・ホップ:ローエングリン
イングリート・ビョーナー:エルザ
ハンス・ギュンター・ネッカー:テルラムント
アストリッド・ヴァルナイ:オルトルート
クルト・ベーメ:国王ハインリヒ
ヨゼフ・メッテルニヒ:伝令
他
さて、クナッパーツブッシュ最晩年の「ローエングリン」であるが、感想を書くのが難しい。
いや、クナ・ファンとしては「クナの最晩年の巨大な音楽が聴けてうれしい!」の一言なのだが、一般にこれがどれだけ伝わるだろう、という危惧もある。
ワーグナー最後のロマンティック・オペラである「ローエングリン」は、この「クナの最晩年の巨大な音楽」を包括しきれていない気がする。そして、このオペラの特徴である、美しさや後の楽劇に比しての聴きやすさ等が見事にそぎ落とされている。
なので、普通に聴けば「なんだ、このローエングリンは?」といった演奏で、クナの凄味が伝わり切らない気がする。
しかしである。個人的には「ローエングリン」というオペラは、例えば「ペーター・ホフマンがローエングリンである」とか「ヴァルナイがオルトルートである」とか「ヤノヴィッツがエルザである」という意味付けが無いと、モチベーションが保てずに、聴き通すのに苦労するオペラなのだが、クナの場合は一切そういう事が無い。そういう意味でも実は驚異的な音作りであることは確かなのだ。やはり、クナ独特の音楽の息遣いなのだろう。
歌手陣は、ホップ、ヴァルナイを始め、豪華な配役だが、さすがに今まで発売が無かった事からわかるように、音質はあまりよろしくない。