デイヴィスの ベルリオーズ 歌劇「トロイアの人々」旧盤

ベルリオーズ 歌劇「トロイアの人々」
コリン・デイヴィス指揮 コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団 合唱団(1969)
ジョン・ヴィッカーズ(T)
ジョセフィン・ヴィージー(Ms)
ベリット・リンドホルム(S)
ピーター・グロッソプ(Br)
ロジェ・ソワイエ(BsBr)
イアン・パートリッジ(T)
ヘザー・ベッグ(S)

ベルリオーズの「トロイアの人々」の世界初の全曲録音である。
ここまでベルリオーズにはまると思っていなかった頃は、完全版のデュトワ盤があればいいと思っていたが、今では、なるべく多く「トロイアの人々」を聴きたいと思ってしまった。そうなると、このデイヴィス盤ははずせない。
完全版というのは、第1幕のいわゆる「パントマイムの場」の後に「シノンの場」があるかないかなのだが、これがあるとストーリーに矛盾が無くなるらしいが、時間的には数分なので、音楽的にはあまり影響がない(デイヴィスは新盤でもここを演奏していない)
しかし、このデイヴィス盤以降、1993年のデュトワ盤まで全曲盤がひとつもない、というのはやはり異常である。それ以降も映像を別としてこの2つのみがオフィシャルの全曲盤という期間が結構続いたのだ。そしてデイヴィスの新盤(2000年)以降徐々に増えてゆく。

さて、演奏であるが、ネット上でデュトワの色彩美、デイヴィスの構築美という対比の仕方をしているのを見かけたが、言い得て妙である。緻密な美しさを求めるならデュトワ、骨太なドラマティックさを求めるならデイヴィスということになろうか。デュトワ盤はさくさく聴ける、と書いたが、デイヴィス盤はわくわくしながら聴ける。ただし若干せわしなくなっている部分があるのが残念。例えば第4幕冒頭の有名曲「王の狩りと嵐」など、デュトワ盤の落ち着いた演奏の方が好ましい。
歌手陣ではアエネアスのジョン・ヴィッカーズはさすがに素晴らしいが、若干荒っぽくて品が無くなってしまった感あり。
ディドのメゾ、ジョセフィン・ヴィージーが伸びやかな声で素晴らしい。手元にある録音はクレンペラー魔笛で3人の童子、カラヤンワルキューレでフリッカがあるが、その時は良さがわからなかったなあ。あと、ディドの妹アンナのヘザー・ベッグもいい。
デュトワ盤と比べてつくづく思うのは、90年代以降はやはりオペラ歌手はスマートになったがスケールは小さくなってしまったなあ、という事。