ディーリアス 「弦楽四重奏曲」「弦楽オーケストラのためのソノタ」「去りゆくつばめ」(顛末記)

ディーリアス

弦楽四重奏曲
ブリテン弦楽四重奏団(1995)(EMI)
フィッツウィリアム弦楽四重奏団(1978)(デッカ)

弦楽オーケストラのためのソノタ(フェンビー編曲)
フェンビー指揮 ボーンマスシンフォニエッタ(1978)(EMI)

「去りゆくつばめ」(フェンビー編曲)
バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団(1968)(EMI)

そもそもは、EMIBOXで「去りゆくつばめ」(フェンビー編曲)を見かけて、日本と海外の「ディーリアスの楽曲一覧」で探した時にその曲名(英語名"Late Swallows")が見つからなかった事が発端だった。
よく似たタイトルの管弦楽付き独唱曲「去りゆくひばり」があるので、これの管弦楽化かしら、と思って聴き比べてみたらどうも違う。
これはディーリアスの遺稿かなにかをフェンビーが仕上げたんだろう、と結論付けようとした正にその時、EMIBOXのフェンビー編曲集と銘打たれた別のCDの解説に
"Sonata for String Orchestra"(弦楽オーケストラのためのソノタ)の第3楽章のタイトルが"Late Swallows"とあった。
そして同じCDに続けて弦楽四重奏曲が収録されており、その第3楽章がやはり"Late Swallows"である。
つまりは、弦楽四重奏曲を弦楽オーケストラ化したのが「弦楽オーケストラのためのソノタ」であり、その第3楽章を独立して演奏したのが「去りゆくつばめ」であったのだ!
EMIBOXでは、そのことをあきらかにするために、わざと続けて収録したに違いない。
「去りゆくつばめ」はしっとりとした非常にいい曲で、他の楽章は"With animation""Quick and lightly""Very quick and vigorously"と、演奏上の注意書きなのに、第3楽章のみが「去りゆくつばめ」という標題がついている。ディーリアス自身も特別な思いがあったのかもしれない。

弦楽四重奏曲版では、フィッツウィリアム弦楽四重奏団の方が全体に速めのテンポで躍動感があり、本来の弦楽四重奏曲としての演奏は、これが正解と思われる。
しかし、この曲はテンポを落とすと弦楽四重奏曲の範疇を越えた別の顔も見えてくる。ブリテン弦楽四重奏団盤とフェンビー盤は、ほぼ同じテンポ設定で、フェンビーがそこらへんを見抜いて弦楽オーケストラ化したのか、と考えると興味深い。

バルビローリ盤は、第3楽章を独立させた演奏という事もあろうが、最もテンポが遅く、いつものバルビローリとは別人のようなしっとりとした指揮ぶりで、他も全部こんな風にやればよかったのに、などと思ってしまう。。