手塚治虫「火の鳥」の話

「漫画なんて幼稚だ、とバカにしていたアメリカ人の友人が涙を流すほど日本の漫画にはまった」みたいな内容の話題があり、その漫画が「火の鳥鳳凰編」と言うことで、調べてみた。
子供のころから知っているものというのは、なかなか改めて調べる気にはならないのだが、いろいろとびっくりする発見があった。

私が子供のころは「火の鳥」と言えば朝日ソノラマの大判で、長年それに親しんできたのだが、何回か書いているが身の回りのものがすべてなくなった時期を経て、再度揃えようとしたときは角川のハードカバーの豪華版だった。
「乱世編」まで読み進めてきて、いろいろと疑問点があったのだが、決定的なのはラスト近くで義経が死ぬシーンがまったく別のものになっていたことだ。
当時は、昔の漫画の差別用語が書き換えられていたりする問題があったので(カムイ伝のセリフが「メ〇ラ」を「目が不自由」と書き換えられたり)「これは勝手に改ざんされたんだ!」と憤慨し、朝日ソノラマ版の古本で揃えなおしたりしたものだが、実は手塚治虫本人が角川版出版の際に描き直したとのことだった。
また、COM版の「望郷編」や「乱世編」があることも知らなかった。
一番びっくりしたのが、結末の想定と猿田彦の話で、結末をどうするかは、手塚治虫本人がいろいろな時期にいろいろと言っているので定説はないのだが、当初の構想としては、アトムが生まれる時代を描いて終わるつもりで(手塚キャラのオールスターキャストを登場させる予定だったらしい)その伏線として「黎明編」の雑誌掲載時は猿田彦について

「この物語の中では、猿田彦は、ただの防人ではあるが、お茶の水博士の先祖ということになっている」

という解説がついていたのだとか!!!!

それが、単行本掲載時は

「この物語の中では、猿田彦は、ただの防人ではあるが、彼の子孫は、物語全体を通じていずれも重要な役割を持つようになるのである」

に変更され、勿論私が知っているのはこちらのセリフである。
私は年齢的には雑誌掲載のリアルタイムを知らないので、これは目から鱗のびっくり情報であった。