スライ&ザ・ファミリー・ストーン「フレッシュ」"Fresh"(1973)

前作「暴動」から2年、麻薬中毒も克服してスライが万全の体制ではなったアルバムである。
以前、渋谷洋一の「レコード・ブック」にこのアルバムが載っていた、と書いたが

https://hakuasin.hatenablog.com/entry/2022/01/04/081905

1stから順に聴いてきて、なぜ「スタンド」でも「暴動」でもなく「フレッシュ」なんだろう、と思ってきた。それほど「スタンド」も「暴動」傑作だったのだ。
しかし、聴いてみて納得、これはもう1970年代のソウルの幕をあけたネオ・ソウルとも言うべき新しい音楽だったのだ。
以前に書いた、アンディ・ニューマークがこのアルバムから参加している。なぜ非ソウル、非ファンクのテクニシャンであるアンディ・ニューマークにスライが目を付けたのか、それも順番に聴いてきた今はよくわかる。「暴動」では、ドラムはゲストやリズムボックスもあったが、スライ自身が叩いていた。それが、以前書いたマイルスの「オン・ザ・コーナー」を彷彿とさせる、あえてファンク的なノリを排除した感じだった。そして、アンディ・ニューマークは、プロのドラマーとして、スライの思惑どおりの、ノリを排除したドラムの完成形を提示してくれていたのだ。

https://hakuasin.hatenablog.com/entry/2021/12/14/055823

そもそも、なぜ今回スライ&ザ・ファミリー・ストーンを聴いてきたかというと上記にも書いたが「ウッドストック」のスライ&ザ・ファミリー・ストーンのスタジオ録音を聴いてみたい、ということだったのだが、もし、最初にこのアルバムを聴いていたらびっくりしたであろう。なぜなら、ここにはもう「ウッドストック」のスライ&ザ・ファミリー・ストーンは存在しない。
「キープ・オン・ダンシング」という曲があり、冒頭から、かの初期の名曲「ダンス・トゥ・ザ・ミュージック」のように「ダンス・トゥ・ザ・ミュージック」というコーラスから始まる。しかし曲の仕上がりは全く違う。これはたぶんスライがわざと同じ歌詞で始まる曲を作り、当時の自分達とはもう違うのだ、ということを明確に提示したかったのだ、というような気がする。