「コルトレーン ― ジャズの殉教者」(2011)藤岡 靖洋

図書館で見かけて迷わず借りてしまった。大変勉強になった。
例えば、個人的に「至上の愛」以前の通常のジャズとしての頂点だと思っていた「ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」が当時評論家にも聴衆にも不評で、レコード会社の要請で急遽バラードやポピュラーのアルバムやEP盤を録音したのだという。EP盤はジュークボックスにかけられるため(ちなみにドーナツ盤の穴が大きいのはそもそのジュークボックス用だったというのは初めて知った)
通常のジャズと書いたが、それは後の「至上の愛」やフリージャズ時代のジョンに比して言うのであって、それでも当時は斬新すぎて評論家も聴衆も理解不能だったらしい。
また「至上の愛」は各パートごとに副題がついているが(私はこのアルバムを輸入盤で持っているので、もしかして邦盤の解説にはあるのかもしれないが)パート1の副題の「承認」というのは懺悔のための過去の自分の罪の「承認」であること。
その罪とは最初の妻ナイーマとの結婚期間の間に他の2人の女性と関係があり、その1人とは子供まで作っていた、という不倫の罪であった事。
そしてその懺悔を二人目の妻アリスが受け入れた、という事。
何も知らなかった頃は最初の妻の名を冠した「メイマ(ナイーマ)」をアリスが演奏するとき、どんな気分なんだろう、等と思ったものだが、ジョンとナイーマは離婚後も友情関係は続き、アリスとナイーマもお互いに尊敬しあっている関係だったとのこと。
下卑た想像を恥じる。
こちらがオリジナル。

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こちらがフリージャズ以降のバージョン。テーマのメロディはこっちを先に聴いていたせいもあるがこっちの方が好き。このアルバムだけは若い頃アルバイト先のジャズ喫茶で既に聴いていた。

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